「私は愛されてないかと思ってた。ずっと、捨てられたんだと思ってたっ」
「そんな事ないわっ。辛い思いをさせてごめんなさい……ダメな親で本当にごめんなさいっ」
「そういう事なら、もっと早く言って欲しかった……ねぇ、誕生日に行けるって言って毎年ドタキャンするのはなんで?本当に仕事が入ってるの?」
ずっと、聞きたかった。
「貴方の誕生日の日は、毎年仕事は入れてないわ。今年こそ行こうって、毎年思ってる。もちろん今年もそうだった。だけど、いざ誕生日が近づいて来ると不安になって行けないの。毎年渡そうと思って用意してあるプレゼントも、全部取って置いてる。」
「私は、誕生日だけでもいいからお母さんとお父さんに会いたかったっ!毎年毎年、寂しかったっ……会った記憶が一度しかなくても、愛されてないって思ってても、会いたかった!なんで涼とは会うのに、私には会ってくれないのか、ずっと疑問だった。」
涼は横島さんと一緒にたまに仕事をしにお父さんの会社に行く事があった。
その時にお父さんには会うのに、私には会ってくれない。
その時が一番、愛されてないんだと落ち込む瞬間だった。
「詩織、愛しているわ。」
お母さんは、席を立って私を優しく抱き締めた。
「お母、さんっ……」
長年我慢していた涙が、ポロポロと落ちる。
お母さんを抱き締めたまま二人で泣き合う。
「ほら道矢。照れてないで言いなさい」
「……コホン。詩織、あ、愛してる」
お父さんは顔を赤くして、目は逸らされたけどそう言ってくれた。
その言葉だけで、胸が一杯になる。
お父さんは意外と照れ屋なのかもしれない。