「天草さん。そんな言葉だけ伝えても詩織には響きません。」
「じゃあなんと言えば良いんだ。私たちはちゃんと娘の事を愛していると言っているだろ。」
迷惑そうに、声を少し荒げるお父さん。
心臓が嫌な音を立てて暴れる。
お父さんが怖い。
思わず司の手を強く握る。
「じゃあなんで、詩織に会ってやらないんですか。なんで家に帰って来ないんですか。詩織がどんな気持ちで毎年誕生日を迎えてるか知ってますか?詩織がどんな気持ちであのデカイ家に一人で住んでるか知ってますか?考えた事ありますか?自己完結しないでちゃんと詩織に伝えて下さい。」
普段、無口で多くを語らない司が、私の為に頑張ってくれている。
場違いかもしれないけど、司がかっこいいと思った。
「貴方…」
お母さんが、お父さんを見る。
「…………」
お父さんは眉間に皺を寄せたまま、目を瞑ってしまった。


