幼稚園に行くようになると、今まで当たり前だと思っていた事が普通じゃないことに気がついた。





幼稚園で出来た友達は、皆親の話をする。




お迎えだって、お母さんが来てくれる。




仲よさそうに手を繋いで帰る友達達。




私は?



お迎えに来てくれた田中さんに、私は聞いた。




「なんで詩織のママとパパはお家に居ないの?」




田中さんは、困ったように眉を下げた。




「奥様と旦那様は、お忙しいのです。詩織様には田中が居るので我慢して下さい。」





「わかった………」





もう、親の顔なんて覚えていない。




家族という存在が分からない。




モヤモヤが私の心の中で動く。




「ママとパパに会ってみたい」





それで小さい私は、よく泣いた。