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まず最初に言っておこう。
私が両親に会ったのは、10歳の誕生日の日だけだ。
育てられた記憶はないし、笑いかけてもらった記憶もない。
両親は財界で有名だし、よくメディアにも出る。
だから顔は覚えているし、声もテレビで聞いたことあるからある程度覚えている。
だけど、自分の記憶の中の両親は顔がモザイクかかって見えないし、声も覚えていないのが事実だ。
私の母親は、貿易会社の取締役。
父親は、日本で五本の指に入ると言われている天草グループの総帥。
そんな二人の間に私は産まれた。
物心ついた頃には、私はいつも一人だった。
無駄に広い家に、私とお手伝いさんの田中さん。
それとたまに来るベビーシッター。
二人、時々三人だった。


