「詩織を返せ」
「それは無理だね。」
「…………」
寝室が司の殺気で包まれる。
「詩織は今、俺の彼女だ。返せと言われてもお前のモノじゃないだろ?」
「どういう事だ詩織」
「どういう事ってそのままの意味よ。私は和樹の彼女。私の男関係に口出さないのが約束でしょ。放って置いてよ」
「裏切ったのか」
「裏切った?どういう事?」
和樹もさっき変な事言ってたし。
「こいつは俺たちと敵対している族の総長だ。お前が拉致られたから迎えに来た。」
「和樹?どういう事よ」
「ん?俺は詩織が好きだからもう一度やり直したかっただけ。そのおまけで俺の役職が付いちゃった、みたいな?だからついでに詩織拉致っちゃおーって。」
ノー天気な和樹。
うん。知ってるよ?和樹が自己中だって。
昔からそうだし。
「お前は、何も知らなかったのか?」
「初耳よ初耳。」
「はぁ……」
司のため息で、緊迫していた雰囲気が少し和む。


