「今更先輩なんて言えねーし、それはないだろ。
別にお前のこと女だとも思わないしな」


「……かなり、失礼だと思うけど。それ」



“女だと思わない”


そう言われて悪い気がしなかったのはきっと、安心した所為。


私を見る目が一向に変わらないことに。



「……女、嫌いなんだよ、心底。だから、お前を女って認めたら嫌だなって思った」


言ってて恥ずかしいことを照れもせずに言い切ってしまう姿に清々しささえ感じる。


言った後の微妙な顔を見て、彼に踏み込まないことを私も決めた。


訳ありなのはお互い様。


なら、こんな付き合いもきっと、有り。


次に会う時は挨拶の一つくらいは交わすに違いない。


それ以上も、それ以下も、何もないけど。


全然、嫌だなんて思わなかった。



また、会ったら。


そんな事を一縷に考える私の頭からは既に、悩みが吹き飛んでいた。