あたしは、窓際に飾られた忘れな草を見つめる。
花言葉は……確か、『私を忘れないで』…とかだった気がする。
「………私を忘れないで…」
「え……?」
あたしの呟きに気づいたお母さんは、不思議そうにあたしを見つめた。
お母さん、お母さんの心のどこかに……あたしは、まだいますか?
それとも、もう一欠片もいないのかな?
「ううん、何でもないよ」
あたしは、お母さんを安心させるように笑顔を向ける。
そんなあたしの顔を、お母さんはただジッと見つめた。
「あなた……」
お母さんは、あたしの頬に手をそっと伸ばし、触れた。
「え……?」
「……ほ……の、か……?」
あたしの頬に触れたお母さんの目からポロリと一滴涙が溢れたのが分かった。
「お母さん、あたしの名前…」
「っ……ううっ………はぁっ、はぁっ…」
お母さんは頭をおさえて、呼吸を荒げる。
お母さん……あたしと同じ。
思い出す度に苦しくて、悲しくて…だから、忘れたかった。
忘れた方が、幸せな事もある。


