『お孫さんは、PTSDですね』

『ぴーてぃー……?』


おばあちゃんがあたしをお母さんの入院している精神科外来に受診させると、38歳と若い精神科医の東 和徳(ひがし かずのり)先生はそう言った。



『心的外傷後ストレス障害というのが正式な名前で、死を意識するような体験によって、心理的なトラウマを生じる病気です』


『ほのかは、病気なんですか?』


おばあちゃんの不安そうな声と、先生の声。
あたしはどこか、他人事のように聞いていた。



『主に、フラッシュバックや、記憶の一時的な欠損、寝れなくなったりと過度に覚醒してしまう病気です』


あたしは、どうやら病気になってしまったらしい。
先生の言った症状は、あたしに当てはまっていた。


『先生、ほのかは…治るのでしょうか??』

『心の病気は、とても難しい。半年で完治する人もいれば、ずっと病気と一緒に生きていく人もいます』



先生は、あたしを見つめて、そっと安心させるように頷く。


『ほのかちゃん、長い戦いになるかもしれない。だけど、僕も一緒に戦うから、どうか1人だと思わないでほしい』


『……………』


あたしは何も言わず、ただ頷いた。