病院を出る頃には、外は真っ暗になっていた。

病院を出てから、あたし達は一言も話していない。


これで、終わりだ。

渚くんもこれで分かったはず、あたしは……普通の家の子じゃないって。


「……ほのかちゃん」

「お母さんは、あたしのせいで壊れちゃったんだ」


渚くんより前を歩いていたあたしは、足を止めてそう言った。

渚くんの視線を背中に感じる。


「あたしの存在が、お母さんを…」


もういっそう、全て話してしまおう。

誰でもいいから、話して楽になりたかった。


「お父さんは、娘じゃなくて息子がほしかったらしくて、理由は分からないけど、あたしが小学生の時に離婚しちゃった」


暗い夜空を見上げる。

気持ちまでどんどん闇の中へ落ちていくように、暗くなる。


「お父さんは離婚してすぐに再婚して、お母さんはそれが悲しくて、息子を生むために、彼氏を作ったんだけど……」


もう、この時点で…お母さんの心は壊れていたのかも。

あたしが、幼すぎてなにも気づかなかっただけで。