ーカラカラ…
「……会いに来たよ」
あたしは、いつもみたいにスクールバックの取ってをギュッと握る。
そして、ベッドに座るお母さんに笑いかけた。
「あのね、今日お父さんが来て、この子の事を可愛いって撫でてくれたの」
お母さんは、またいつものように、くまのぬいぐるみの頭を撫でながら、幸せそうに笑う。
「そうなんだ……良かったね」
あたしは、お母さんの前に丸イスを2つ置いた。
そして、病室の入り口で立ち尽くす渚くんに、視線を向けた。
「あの、こんにちわ……」
渚くんは、意を決したようにあたしの隣に腰を降ろす。
「ねぇ、あなた達はだあれ?」
「……え?」
あたしにとっては、何度も聞かれた言葉。
だけど、渚くんは娘のあたしに「誰」と質問する母親に驚いたのか、言葉を失っていた。


