渚くんが悪い訳じゃない。
なのに、渚くんはあたしに謝る。
たぶん、見てはいけない、触れてはいけないものだったと気づいたからだと……思う。
「ほのかちゃん……聞かない。聞かないから…」
あたしは俯いたまま、渚くんの顔を見れなかった。
怖い、知られたくない。
可哀想な子、みんなと違うって、思われたくない。
「ほのかちゃん、ほのかちゃんの顔を見せて…」
「っ……なんで、ここまで見て聞かないでいてくれるの」
もう、明らかにあたしが何かを隠している事は分かってるはずなのに…。
前にもした質問を、渚くんに投げかける。
「怖いんだ」
「え……?」
渚くんの一言に、あたしは驚きで顔を上げる。
どうして、あたしではなく渚くんが怖いの?
「ほのかちゃんは、近づきすぎると…もう二度と、俺を見てくれない気がして」
「それは……」
……そうだ。
あたしは、このすべてを知られたら、きっとその人から離れていく。
それが、例えどんなに大切で、大好きな人でも。
でも、梨子はあたしを虐待に合う前から知っていたから、仕方ない事だと思って傍にいる。
でも、自分の過去に梨子も縛り付けてしまった。
あたしの為と動く梨子を見るたび、自分の罪を見ているような気がして苦しい。
もう、こんな苦しみは知りたくない。


