「ヒューッ、愛されてるぅ!」
「琢磨、それ古くない?」
テンションが高い琢磨くんに、梨子は苦笑いを浮かべた。
「ヒューッ」
「優真、あなたはテンション低すぎ。やらなきゃいいのに」
さんざんからかわれながらあたしと渚くんは顔を見合せられずに俯いた。
「渚くん……」
「は、はい!」
そんな、あからさまに反応されると恥ずかしい。
でも、お礼だけはちゃんと言わなきゃ。
助けて、くれたんだもん。
「ありがとう……あの、それじゃあ、また明日」
「え、ほのかちゃん!?」
あたしはペコリと頭を下げて全速力でそこから駆け出す。
恥ずかしくて、よく分からない感情に胸が苦しくて、渚くんの顔を見ていられなかった。
ーカツンッ
だから気づかなかった、家の鍵を落としていた事に。


