「ははっ、違うよ。ほのかちゃんの涙を拭きたいんだ」
「え……?」
そして、渚くんがすぐ傍にいる事に気づく。
フワリと、甘いフローラルの香りがした。
花の……落ち着く香りだな…。
顔を上げると同時に頬に伝う涙を、渚君は指で拭った。
温かいあたし以外の体温。
男の人に触られているのに、不思議…全然怖くない。
「いつか、ほのかちゃんの本当の笑顔がみたいな」
「本当の……笑顔……」
まさか、渚くんはあたしが本当に笑ってないって気づいてた?作り笑いだったって。
驚きに、目を見開き、渚くんを見つめる。
曇りの無い、綺麗な瞳だと思った。
この人に触られても、見つめられても、怖くない。
「絶対、すっごく可愛いんだろうな!」
そして、パァッと笑う渚くんの笑顔に、目を奪われる。
まるで、花が咲くみたいに笑うんだな。
なんでだろう、すごく落ち着く…。
いつまでも見つめてみたい、そう思いながら、あたしは渚くんの笑顔を目に焼き付けるように見つめた。


