「あなたのした事はっ……絶対に許せない」


それは、絶対に許せない。

あたしとお母さんを苦しめ、傷つけた。

今でも、その傷と戦ってるんだ。


「ハッ、だから忘れないで、俺に復讐するのか…」


男の自嘲するような笑みに、あたしは静かに首を横に振った。

すると、男は怪訝そうな顔をしてあたしを見つめる。


お母さんに、忘れても良いって言った時、本当は忘れられるのが、いなかった事になるのが、悲しくて怖くてたまらなかった。


「忘れられるって……悲しいから……」

「っ!!」


男は、あたしを見つめて、言葉を失っている。

あたしは、ただ無償に胸が切なかった。


「16時25分、傷害罪で現行犯逮捕!!」

「っ………」


警察に逮捕される藤枝 孝は、それから一言も喋らずに警察に連行された。


それを見送り、姿が見えなくなった途端、膝から崩れ落ちる。