「忘れるな!!お前達は逃げられないぞ!!」  

「っ………」


いつだったか……。

この男は、同じ言葉をあたしとお母さんに向けて言った。

それに、ずっとずっと怯えて生きてきた。


だけど、この男は、あたしとお母さんと同じ気持ちだったんじゃないかと、今になって思う。


「分かった、忘れないでいる………」

「なっ………に、を………」


あたしの一言に、藤枝 孝は信じられないと言わんばかりに目を見開いてあたしを見上げた。


「ほのかちゃん……?」


その言葉に、あたしを抱き締める渚くんの声も、動揺しているのが分かった。


ただ、なんとなく……。

この男からは、暴力でしか、接する事は無かったけれど…。


あたしは、お母さんに、お母さんはお父さんに、この男は…自分以外の誰かに……愛されたかったのかもしれない。