「ほのか、行きたい場所があるんじゃないの?」
「お母さん……」
お母さんは、何もかも見透かしたかのように、そう言った。
あたしは、お母さんの顔を真っ直ぐに見上げる。
「あたし……好きな人が出来たの」
「うん」
「その人に、伝えたい事があるんだ」
そう言ったあたしから、お母さんは手を離す。
そして、優しく微笑んだ。
「あなたは……後悔しないで。幸せになって」
それは、お母さんの経験から言える願いなのだと思う。
あたしは、それに静かに頷いた。
そして、病室から飛び出す。
「ほのか、お母さんとは……」
「梨子、あたし、ちゃんとっ……」
慌てていたせいで、ちゃんと話せない。
梨子に支えられながら、あたしは呼吸を整える。


