「だから、あなたを傷つけた……っ」
こんな考え方をするあたしは、もうおかしいのかもしれない。
だけど、あたしはお母さんに傷つけられても、お母さんを憎む事だけは出来なかった。
「あなたに、殺してもいいって言われたとき、ふと我に返ったの。それで、自分がした事に、怖くなったわ…」
震え出すお母さんに歩み寄ろうとして、あたしは足を止める。
近づいたら消えてしまいそう。
いつか、渚くんにあたしが言われた言葉を思い出す。
それが今、分かった気がした。
お母さんは、傷つきやすく、脆くて、触れたら壊れてしまいそうで…近づくのが怖かった。
「あなたを、愛しているあなたをっ…気がついたら、この手で締めてっ……うぅっ」
泣き出してしまうお母さんを、あたしも泣きながら見つめた。
傷つけてるお母さんも、傷ついていたの、分かってた。
だって、あたしはお母さんの娘で、誰よりもお母さんを見つめていたから。


