「それから、渚……会えないって分かってて、ほのかの病室の前まで、行ってたんだよ」
「渚くん………」
渚くん、本当にここまでくると……優しいにも程がある。
本当に本当に……バカだよ。
あたしなんかの為に、ここまでするなんて…。
「ほのか、渚を信じて」
「え……?」
言葉の意図が分からなくて、あたしは首を傾げる。
梨子は、あたしをギュッと抱き締めた。
「今度こそ、お母さんと向き合うの。渚が、その絆を繋ごうとしてくれてる」
「渚くんが……」
渚くんが、お母さんとあたしの絆を繋ごうとしてくれた。
正直、お母さんと会うのはまだまだ怖い。
だけど……。
お母さんから逃げたままでいいの?
何より、あたしの為に、あたしの大切な人…お母さんの為に動いてくれた渚くんを、信じたい。
「ふぅ……っ」
あたしは、そっと、梨子から離れて、お母さんの病室の前に立ち、瞳を閉じて、深呼吸をした。
そして、ゆっくりと目を開ける。


