「ほのかちゃん、もしそんな人がいるのなら、離してはだめだよ」

「先生、あたしは……重荷になって生きていくのは嫌です…」


あたしは、先生から視線を外して、病室にある、忘れな草を見つめる。


おばあちゃんが来た時に、いつも水をあげてくれていたからか、今も枯れることなく花を咲かせている。


もういっそう、枯れてくれれば…とも思った。

枯れてくれれば、渚くんの事も、思い出さずに済むんじゃないかって。


「人は、誰しも1人では生きていけないし、常に寄りかかり生きている。重荷というより、大切な人と、痛みも苦しみも、共有している……の方が、しっくりくる」


「でも、その苦しみが釣り合わなかったら?」


どちらかの苦しみや痛みが、重すぎる時は?

相手にかける負担の方が、かけられる負担より大きいなんて…。

「釣り合う釣り合わないじゃない。どちらのモノとかではなくて、2人のモノなんだと、私は思うよ」

「2人のもの………」



渚くんも、同じ気持ちだったのかな。

渚くんも、あたしの事……あたしの背負ってるモノを、2人のモノだと、思っていてくれてたのかな…。