「渚くんなら、怪我も幸い、大きなものじゃなかったって。もうじき、面会にくるころだよ」
「そう………」
良かったっ…。
渚くんに何かあったら、あたしは自分を恨んで、きっと死んでしまう。
「渚くん……ほのかちゃんが倒れてから、ずっと通ってきてくれてるよ」
おばあちゃんは、病室に飾られたカスミ草の花を指差す。
あれ…お母さんにも渡してた。
「それに、お母さんにもね、会いに行ってたみたいだね」
あぁ、ここは……お母さんの入院している病院なんだ。
渚くん、あんな目にあったのに……お母さんの事も気にしてくれて…。
「もう……もう、十分だよ……」
あたしは、ベッドの上から、渚くんがもってきてくれたカスミ草の花を見つめる。
「……おばあちゃん」
あたしは、カスミ草の花を見つめたまま、おばあちゃんを呼んだ。
「渚くんに、もうここには来ないでって伝えてほしい」
「ほのかちゃん……本当に、いいのかい?」
振り返らないあたしの背中に、おばあちゃんは悲しげに声をかけてくる。
渚くんに、これ以上迷惑をかけたくない。
ううん、違う。
渚くんを、あたしのせいで傷つけたくない。


