「お前のせいで、ほのかちゃんがずっと泣いてるんだ!!」
渚くんは、藤枝 孝の胸ぐらに掴みかかる。
それを、藤枝 孝は可笑しそうに笑った。
「だから何だよ?良かったなぁ、ほのかちゃん。お前の事心配する奴がいて」
胸ぐらを捕まれた藤枝 孝が、あたしに視線をむけて、ニタリと笑う。
「渚くんに……渚くんに、何もしないでっ……お願いっ!!」
みっともなくてもいい、渚くんを守れるなら、この男にまた傷つけられてもいいと思った。
「お願い?ハッ、いつからお前は俺にお願い出来る立場になったんだよ?」
「それ以上、ほのかちゃんに喋りかけるな!!」
藤枝 孝の言葉に、渚くんが怒鳴る。
「そうか……この彼氏のせいか、ほのかちゃん?」
そう言って藤枝 孝の視線が、渚くんへと移った。
嘘、やめて……渚くんに、何するの……?
やだ、やめて……。
「やめて……やめてっ!!」
「死ねよ」
ーザシュッ!!
銀色の光が、夕日に照らされて見えた。
そして、ゆっくりと渚くんの体が、後ろへと倒れる。
「っ!!」
渚くんは、声にならない声を上げて、腕を抑えていた。
Yシャツから滲む赤と、藤枝 孝の手に握られたカッターを、あたしは交互に見つめる。


