「ほのかちゃん、まさかあの男……」
「あぁ!ほのかちゃん、そこにいたんだ」
藤枝 孝はゆらりと、あたしへ歩み寄ろうとする。
震えるあたしを渚くんはさらに強く抱き締めた。
「ふざけんなっ!!ほのかちゃんにそれ以上近づくなよ!」
渚くんは、今までに聞いたこと無いような低い声で、藤枝 孝さんを睨み付けていた。
渚くん、危ないよ……渚くんまで傷つけられたらっ…。
「渚くん……ダメっ……」
あたしは、渚くんの服の袖を引っ張り、泣きそうになりながら、渚くんを止める。
逆らったら、何されるか分からない!!
「ほのかちゃん、もうこんな男に怯えなくていい。俺が、絶対に守るから」
渚くんはあたしを安心させるように笑みを向けてくれる。
その優しさが、今は一番不安だった。
止めてほしい、あたしのせいで渚くんが傷ついたら、もう…自分の事を許せなくなる!!
「お前……誰だよ?ほのかちゃんは、俺の家族なんだ」
「ほのかちゃんの彼氏だ」
渚くんを見る、藤枝 孝の目付きが変わった。
まるで、人を殺しそうなほどに鋭く、殺気だった目だ。


