そして、渚くんと歩いていると、いつか、あの男が立っていた電柱の横を通る。


ードクンッ


「っ……うぅっ……」

「ほのかちゃん!!」


胸を抑えてしゃがみこむあたしを、渚くんはとっさに支える。


「苦しいの、ほのかちゃん!」

「はぁっ、はぁっ………」


呼吸が、苦しいっ……。

涙が目に滲み、あたしはタブレットケースのふたを開けようとする。


ーカランカランッ


なのに、焦れば焦るほど、タブレットケースの蓋を開けられず、手からタブレットケースがこぼれ落ちた。


それに手を伸ばそうとして、すぐに渚くんがそれを拾う。


「セルシン、だっけ、水は…俺の飲みかけのがあるから」


渚くんは、迷わずあたしに過呼吸の薬を渡し、飲みかけのミネラルウォーターを蓋を開けて手渡した。


「はぁっ、はぁっ……ゴクンッ」
 

それを受け取って、すぐに薬を飲んだ。

そして、息をゆっくりと整える。

渚くんは、そんなあたしの背中を優しく擦ってくれた。



「はぁっ……ふぅ……」

「落ち着いてきた、もう苦しくない?」


渚くんは、心配そうにあたしの顔をのぞき込む。

あたしは静かに、頷いた。