「それで、あたしをっ……」


頭の中に、あたしを突き落とした時の、あの男の狂喜に満ちた顔を思い出す。


「ほのかちゃんに、そいつまた何かしたのか!?」


渚くんは、不安そうな顔で、あたしに迫る。

あたしは、渚くんを見て、またポロポロと涙を溢してしまった。


「階段から……突き落とされた…の……」

「っ!?」


それを聞いた途端、渚くんは目を見開き、俯く。

そして、ゆっくりと顔を上げる渚くんは、肩を震わせ、怒りに満ちた顔をしていた。


「警察にいく……こんなの、犯罪だ!!」


「……無理だよ、近づかないっていう約束だけで、結局……結局、あたしとお母さんをっ……」


警察に頼る?

結局、牢屋にいるわけじゃないんだから、意味ない。

いつだって、あたし達を、あの男は見てるんだっ…。


「どこに逃げてもっ…あたし達はっ……自由になれないっ!!」


両手で顔を覆い、あたしはただ泣き続ける。

そんなあたしを、渚くんは強く抱き締めた。