「階段から落ちたって聞いて、俺っ…すごく不安で、ずっと生きた心地がしなかったんだ」


渚くんは、あたしを強く強く抱き締める。


そうだ、あたし階段から落ちて……違う。

落ちたんじゃなくて、落とされたんだ、あの男に…。


「傍にいるって言ったのに、一人にしてごめん、ごめんっ……」

「ち…がう、違う……」


あたしは、重い頭と、痛む体を堪えて、渚くんの頬に手を伸ばす。


「渚くんは……悪く…ないっ…」

「ほのかちゃん、泣いてる……どこか、痛む?」


涙を浮かべるあたしの目元を、渚くんは優しく拭う。

言葉にするのも嫌だけど、話さなきゃ……。


「あの男が……あの男が、来たの……」

「それって、ほのかちゃんとお母さんを傷つけた…」


あたしはコクりと頷く。

ガタガタッとまた、体が震え始める。

震える手を、渚くんにギュッと握られた。


渚くん……渚くんは、あたしを安心させようとして、手を握ってくれてるんだ。


それに背中を押されるように、あたしは話し出す。