恋色風船

熟練の鍼灸師が、人体のツボのひとつひとつに通じているように、林は女を喜ばせる手管を知りつくしている。

それは惜しみなく麻衣に披露され、麻衣は素直に快楽にうち震える。


「僕は、残念ながら車だから飲めないけど、麻衣ちゃんはどうかな。
この店、ワインもなかなかいいものを揃えてるよ」


「あんまり強くないんです。でもせっかくだから、グラスの赤をいただきます」


男は酒豪の女など、決して好まない。

それでいて、ほどよく酔うことを望んでいる。
今夜の麻衣は、その難しい注文に、ひとまず応えようとしている。