恋色風船

あくる朝は、ホテルの離れにしつらえられた茶寮で、朝がゆを味わった。

有名な料亭の板前をわざわざ呼んで、特別にふるまわれる一膳だ。

濃く熱いすっぽんと、むせるほどの行為を堪能した体に、やわらかな粥の味がしみわたる。


たいした会話をするわけではない。

それでも、ともにする時間の長さは、相手のさまざまなことを、麻衣に教える。

林の仕事や、家庭のこと。

一緒にいると、ときおり林の携帯が鳴る。
林は画面を確かめて顔をしかめ、それでも3回に一回は電話にでる。

無視できない取引先らしい。

もれ聞こえる会話からも、林の社会的立場がうかがえる。