恋色風船

学生のころ、コンパで利用していた和風居酒屋とくらべるのは失礼な話だが。

つい、本物だ、という感想がわく。
侘びたたたずまいの数寄屋造り。老舗の風格が感じられる。

物珍しさにきょろきょろと視線をめぐらせた。

とおされたのは、奥の個室の座敷だった。

先付けは、すっぽんのしぐれ煮と刺身。


それをすんなりと腹におさめたころ、ぐつぐつと沸き立つ音と白い湯気とともに、土鍋が足早に運ばれてくる。

お運びの女が、「まる鍋どす」とだけ告げる。