恋色風船

「今日はどちらに行くんですか?」


「麻衣ちゃんの希望があれば、どこでも行っちゃうけど」


「そんなァ、特にないですよ」

こんなときに、ぐずぐずする男は論外だ。


「じゃあ、広尾とかどうかな?」

「わたしあんまり行ったことないです」

「ときどき行くイタリアンがあるんだけど」

「そこ、ぜひ行ってみたいです」

「じゃあ、決まり」


林がハンドルを切る。
もちろん、予約済みだろう。