恋色風船

おおっぴらにできない関係。
禁断の蜜の甘さを、麻衣はいま、味わいはじめたところだ。


「ここのシェフは、イタリアで修行を積んだ人だから、珍しい手打ちパスタを食べさせてくれるよ」


「いろんな種類があるんですね。迷っちゃう」


ファーストフードのハンバーガーをかじっていて楽しいのは、彼とだからだ。

秘密の場には、正統派の美食がぴったり合う。


取引先との食事に二回ほど使ったことがある、と林は説明して続ける。


「やっぱり素敵な女の子と来ると、同じ店でも全然ちがうね」

そうして、今日の服装やメイクへの賛辞も忘れない。

リップに目を留めて、「食べたくなっちゃうよ」といたずらっぽく笑う。