恋色風船

「人のものをとろうと思ってるわけじゃないでしょ」

伊藤さんの目が柔和に細められる。
かつてだったら、好色の彩りを宿していただろう。


「そりゃそうですよぉ」

そんな面倒くさいこと、と律子とうなづき合う。


「だったら、彼氏をうんといい男に育てるのがいちばんじゃない」

「なるかなあ」


結論という小難しいものなど、求めていない。

うまい食事と酒のなかで、言葉を転がしているだけだ。