恋色風船

おおいやだ、と麻衣は視線を戻した。

顔は見えないが、なでつけただけの髪は艶がない。

化粧気がなく、目にクマを浮かべた育児疲れの女が、容易に想像できる。


風船がひとつ、ゆらゆらとすぐ横を上昇していった。
子どもがうっかり、手を離してしまったのか。


さいぜんのベビーカーの幼児は、以前、林の待ち受けで見た女の子に似ていると、ふと気づく。

そんなはずはないと、麻衣は打ち消すように笑う。


風船が、あてもなく揺れながら上がってゆく。




【了】