おおいやだ、と麻衣は視線を戻した。
顔は見えないが、なでつけただけの髪は艶がない。
化粧気がなく、目にクマを浮かべた育児疲れの女が、容易に想像できる。
風船がひとつ、ゆらゆらとすぐ横を上昇していった。
子どもがうっかり、手を離してしまったのか。
さいぜんのベビーカーの幼児は、以前、林の待ち受けで見た女の子に似ていると、ふと気づく。
そんなはずはないと、麻衣は打ち消すように笑う。
風船が、あてもなく揺れながら上がってゆく。
【了】
顔は見えないが、なでつけただけの髪は艶がない。
化粧気がなく、目にクマを浮かべた育児疲れの女が、容易に想像できる。
風船がひとつ、ゆらゆらとすぐ横を上昇していった。
子どもがうっかり、手を離してしまったのか。
さいぜんのベビーカーの幼児は、以前、林の待ち受けで見た女の子に似ていると、ふと気づく。
そんなはずはないと、麻衣は打ち消すように笑う。
風船が、あてもなく揺れながら上がってゆく。
【了】



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)