恋色風船

素顔の上に、もう一つメイクで作った顔をかぶせているようなものだ。

付け入る隙のないメイクの完璧さで、奈美は美人の称号を得ていた。


だけれど、と麻衣は思う。
奈美が何人もの彼と長続きしなかったのは、あの完璧すぎるメイクも原因だろうと。

素顔との落差を見れば、百年の恋も冷めようというものだ。


深い哲学があるわけではないが、麻衣にとっては素顔が主で、メイクはあくまで従だ。
自分の美しさを強調する道具でしかない。


男たちは、すっぴんも可愛い、むしろすっぴんの方が可愛い、と口々に麻衣に言う。

多少は恋の目くらましも入っているだろうけど。

化粧をほどこされた顔と、服をまとう肌。

普段は人目に触れることのない、その下の素顔と素肌。
見られるのは特別な間柄だからこそ。


その特権をえた彼らは一様に、麻衣の素顔を賞賛する。