「綺麗な唇なのに、」


するりと撫でられる唇が緩く開けば、困ったように笑う貴方。


「部屋に入ろうか。」


腰を抱かれて、びっくりするくらい優しくエスコートされる。
恥ずかしいよりも嬉しい。
嬉しいよりも幸せ。

神様はきちんと見てくれているんだね。

だって、悲しみの後にこんなにもたくさんの幸せをくれる。


「奏多、君に渡したいモノがあるんだよ。」

「渡したいモノ…?」

「そう、君が喜んでくれれば良いんだけど。」


エレベーターを降りるのは最上階。ワンフロアになっている貴方のお家。
カードキーを差し込み、センサーに手を当てれば開く扉。
片手でそれを押さえて、私の腰を抱いたまま当たり前に部屋へと入れてくれる。

何度訪ねてもなれない拓海さんのお部屋だけど、今の私は"渡したいモノ"が気になる。
拓海さんは私の右手を優しく握りながら、極上の笑顔。

「手を出して。」


首を傾げ、塞がっていない左手を出せば、左手すら掴まれて手の甲に優しく口づけをくれる。
唇を離して右手と同じように優しく包み込まれて、気付けば一つの封筒。


「君へのプレゼント、開けてくれる?」


小さく頷けば嬉しそうに笑ってくれる貴方。
離された両手で封筒から中身を取り出せば一枚の紙。


「………これ…」

「気に入らなかった?」


貴方はどこまで私を幸せにしてくれるんだろう。
開いた紙を見て、拓海さんを見れば不安そうに苦笑を浮かべていて、私が頭を振れば今度は嬉しそうに笑ってくれる。


「これ、書いてくれる?」

「っ………もちろん!」


薄い紙を胸に抱いて、私は気付けば笑っていた。
でも、貴方がくれたプレゼントはこれだけじゃなかったんだね。