■帰り道■
「あんなに怒らなくてもいいじゃん」
「あれはなるが悪い」
「麗ちゃんまで!!」
ハルさん…静かに笑わないで。
「じゃあ、後でな」
「すぐ行く!!」
「家居なかったら海に居るから」
「はあーい。ハル、行こ」
「うん。じゃあみんな後で」
「またね~」
教室で3人と別れ、ハルと蒸し暑い廊下を歩く。
「やっぱ暑い」
「そうかな。俺が前住んでたところの方が暑いよ」
「え~!嘘だ!」
「本当」
前、住んでたところか…。
「ねえ」
「ん?」
立ち止まったハルが冷たい目をした。あたしは、ハルの少し前で立ち止まった。
「こんな中途半端な時期に、転校してきた理由。なにがあったか聞かないの?」
「…ハルは聞いて欲しい?」
「いや、そういうわけじゃ…」
歯切れ悪そうに、ハルが視線を外した。
「だったら聞かない。ハルが話してて、楽しくなるような話をしたい」
そう言って、あたしは笑った。
「変なやつ」
ハルも笑った。
今は話せなくても、いつか話したくなったらでいいよ。
あたしは、ちゃんと逃げずに聞くから。