ファーストキスは予約済み

 奏汰兄があたしの背中を大きく叩いた。その力強さに押されて、一歩足を踏み出す。

「来年、胸を張って会えるように、笑って行け。俺も採用通知と一緒に愛海を待ってるから」
「うん、うん」

 あたしは何度もうなずいた。こぼれそうになる涙を、顔を上げて瞬きをして散らす。唇を引き結び、口角を引き上げて、奏汰兄を見た。奏汰兄が大きくうなずく。

「行ってこい」
「うん、行ってきます」
「帰ってきたら、俺を“兄”なしで呼べるように、練習しとけよな」

 あたしはコクンとうなずく。奏汰兄が……大好きな奏汰が……大きく手を振ってくれた。

 がんばろう。帰ってきたとき、奏汰にふさわしい彼女になれるように、胸を張れるように。

 あたしは笑顔でセキュリティチェックに向かった。背中に大好きな人の温かな視線を感じながら……。


【了】


旅立つ皆様へ、エールを込めて。