みひろんにメイクを任せて、数十分。
「よしっ」というみひろんの声で、私の心臓が大きく脈打った。
さっと手鏡を手渡されて、落ち着かないまま鏡を覗き込んだ。
「…やっぱり、みひろんは上手だね」
「その言い方、もしかして自分でやってみたりしたの?」
ポツっと呟いた言葉に反応され、しかも図星をつかれてドキッとした。
実は、こっそり試そうとしたことがある。
でもうまくいかないし、母の形見だから、そうやすやすと使えなかった。
「自分じゃうまく、できなくて」
えへへ、と笑うと、みひろんは優しく微笑んだ。
「はじめはうまくできないものだよ。
何度かやればそのうち、うまくできるようになるから」
「…でも、みひろんは普段化粧しないのに上手だよね」
「それはあれだよ、チートってやつ」
チートなんて、真面目な顔をして言うものだから、私はおかしくてクスクス笑った。
みひろんも恥ずかしそうに笑っている。
それからもう一度、鏡の中の私を見た。
私に一番似合うナチュラルメイク。
地味な私にはこれくらいがちょうどいい。
「髪は、おろしたままでも十分かな」
でもこれを、とカチューシャまで貸してくれたみひろんに、私は精一杯笑いかけた。
「ありがとう、みひろん」


