中から「どうぞ」という声が聞こえる前に、入るのが私だという合図。
そうしたらほら、
「…なんだ、美乃かよ」
ビックリしたなんて言いながら、私に笑いかける彼がいる。
昔家が近くでよくしてもらってから、一緒に遊んだりと仲良くなったお兄さん。
私よりも一つ上で、一応私と同じ高校の生徒。
なんだけど、去年の春に病気が見つかり入院していて、たまにこうして会いに来る。
いつか治るんだからそんな頻度で来ても、とお兄さんは笑うけど、
私はそんなこと関係なく会いたいんだ。
なんたって、このお兄さん、古川 翔也は私の初恋の人なんだから。


