吉野さんと目が合うと、吉野さんはにっと笑ってみせた。
「えへへ、すごいでしょ?」
その言葉は、私に向けられていた。
ハッとして、思い切り目をそらす。
吉野さんは少しだけ不思議そうな顔をした後、マジックに使ったトランプを見つめていた。
「みひろん、疑ってごめーん」
「やっぱりすごいよな、尊敬するわ」
男子も女子も吉野さんを囲んでいく。
いつの間にか私の入れる隙間はなくなっていて、私はそんな吉野さんから距離をとった。
…本当はすごく羨ましい。
その美貌や裏表のない無垢で明るい性格から、みんなに好かれる彼女が。
でも、少しだけ哀れなんだ。
周りを囲む女子の半分が、人気者の親友という座を狙っていると思うと。
自分のために吉野さんを利用してると思うと。


