「……本当に、来るんだろうな?」 木陰に立った十かそこらの少年が、瞳にかかった黒檀色の前髪の向こうから、彼を睨みつけていた。 このむせるような暑さの中、汗一つかいていない。 紺の袴を身に着け、身の丈と同じほどの真剣を背負っていている。 「なぁに、心配するでない。 わしは、すこぅしだけ先の事が見えるでのぅ……」 彼はそう言って、口元を綻ばせた。 「隼。お主も、なかなか立派になりおるのぉ」 静寂に、ヒグラシの声が響いていた。