「あそうだ。今日ってさ、数学の課題の提出日だよね?」
「え待って。今日?!うわ…終わった。やってきてない…」
「うっそ。あの優等生詩乃ちゃんが課題忘れるなんて雪でも降る??
…なんかあった?体調悪い?」
教室に向かう足を止めて
慌てて背伸びして私のおでこに手を当てる沙羅の顔は、
眉が八の字になって心配顔。
「あのね。沙羅、私…」
沙羅には別れたこと伝えなきゃと、言いかけたとき
背後から近づいてくる聞きなじみのある声に
話そうと思っていた言葉は引っ込んで、
自分だけ時が止まったような気がした。
「…ねえ詩乃。もしかして彼氏と…」
元カレの姿を見つけた沙羅が、何かを悟ったように私と彼とを交互に見てる。
やっぱり彼に会いたくなくて。
沙羅が言いかけた言葉の続きを聞きたくなくて。
「…っごめん」
すれ違うときに彼の顔を見てしまわないように
俯いて、振り返って、
来た道を戻って外へと走り出した。
