一度こぼれてしまったら、涙はもう止まらなかった。






新しく出来た彼の好きな人の存在を知って、

私はもう隣にはいられないんだと自覚させられて。


すれ違うとき、私がそこにいないかのように女の子と話を続けてた彼が

すごく遠くに感じられて。


別れたの?って聞かれるのが怖くて、現実を受け止めたくなくて
あの場から逃げた自分が

惨めで、情けなくて、悔しくて。






とめどなく溢れてくる涙に、
思っていた以上に彼のことを好きでいたんだと気付かされる。



「もう…戻れないのに。」







そう呟いたとき
物陰の向こうから足音が近づいて、





「…なにしてんの?」






ぶっきらぼうな訛混じりの声と一緒に
数メートル先で止まった。