ソファに座っていたひかりは立ち上がり、真っ直ぐに私を見つめる。
「はいはい、そうだね」
私たちのため、ね。
置いていった5000円に私の分はあるのかな。
喉まででかかった言葉をぐっと飲み込む。
母から愛されているのは、ひかりだけだった。
『ひかりすごい!また100点とったの?』
『ひかりは家事もよく手伝ってくれて偉いわ』
『私の子どもはひかりだけよ』
いないものとして扱われていた私。
私は、不倫して離婚した父親に顔が似ているからだ。
私とひかりが小学6年生のとき。
『ひかり、ひなた、今日の晩ご飯は外に食べに行こう
お父さん、すぐ帰ってくるからな』
そう言ったのを最後に父の姿はみなかった。
その日から、母も帰りが遅くなり、次第に帰ってこなくなった。

