2人で並んで階段をおりる。
廊下は吹奏楽部の練習する音や、野球部の声などが響いていた。
玄関につくと、思いもよらない顔があった。
「理央、なんで?」
驚いた私を見た彼は、顔色ひとつ変えず読んでいたであろう手に持っていた小説をとじる。
「一緒に帰ろうと思って」
「彼氏?」
私たちのただならぬ雰囲気を感じた朝陽くんが私にだけ聞こえるよう小声で声をかけてくる。
「幼なじみなの。柳川理央。理央、こっちは矢野朝陽くん。クラスが同じで委員会も同じなの」
「よろしくな」
にかっと笑って理央に手を差し出す朝陽くん。
理央は少し戸惑ったようだが、その手を握った。
「ひかりは?」
てっきり2人で帰っていたと思ったのに。
「しらね。それより早くしろよ」
靴まで履き替えて準備万端な彼に、まだ上履きの私。
理央と2人で帰ったら、絶対ひかりが嫌な気持ちになる。

