伝えたい言葉がある。


(しおんっ!)

「なにしてんだよ。呼ばなくてもいるっつーの。ほら、手、離すなよ?」

心のなかで呼ぶとすぐとなりにしおんがいた。
不安な心だったのが一気に高まる。

しおん……。

繋いだ手が大きくて。
小さいしおんとは違った安心感が私を包んだ。

しおんの手って……どうしてこんなに温かいの?

「……今さっきのは聞かなかったことにでもしとけ」

そんなの、むりだよ。
お父さんが権力ほしさにころされてたなんて、
……そんなの、知らなかった。
ただの、交通事故だって、言われてたからー……。

「そんなのって……ないよ……」

消えそうな声を呟いても、しおんと何も言わずにただひとごみをかき分けて歩く。

今さっきからしおんはなにも言ってくれない。

「ねぇ、しおん……?」

「……あ?」

いつもの口調より優しい声だった。

「お父さんは、どんなひとだったの?」

正直言うと父との思い出がない。
人間界と魔界を行き来してたのかはしらないが、
魔界にいた方が滞在が多かったのだろう。

救急車で運ばれて母が隣で泣いていた、ぐらいにしか私の記憶にはほとんどなかった。

「……優しい方だった」

「そう……」