しおんにつれてこられた場所は、近場にある水族館。
休日はやはり人が多い。

……え、これってデート?なの?
なわけないのに。

「……ほら、こっちにこいよ」

え……。

しおんと、手を繋ぐのはこれで2回目。
本当に錯覚をおこしそうだ。

なんなの?
これって、まるで……。

大きい水槽を二人で、見上げる。
青色がとてもきれいで、水族館なんか久しぶりだ。

「わぁ……」

海の生き物たちが泳いでいる。
懐かしくて、優しい気持ちになった。

綺麗……。

「…………お前は、俺達が憎いか?」

「え?」

隣にいたしおんをみると、横顔が真剣そのもの。
なんて答えればいいか分からなくて、口をつまらせると、しおんが話し出す。

「……ううん。お父さんのことは、知らなかったけど恨まれるようなことしてたのなら――」

「違う!!」

しおんの声で周りが一瞬しんとしたが、また賑やかさを取り戻す。

「……おまえの王は確かなものだった。俺達は直に会ってる訳じゃないから知らなかったが、いつも遠くから見ていた」

私はただしおんの話に耳を傾ける。

「城に通達がきて、王がなくなったときいた時はどれだけの民が悲しんだか……。お前の王を殺したのは、下部だったタウイが手を下したと言うやつがいてな」

……やっぱり、殺されて、しまったの?

胸が嫌に脈打つ。

「そいつの言う話だと政権を握って次期王になろうと企んでいる話を聞いた。お前には言っとかなくてはと思って……」

何をいっていいのか、わからない。


「俺が指図を受けたのも、このタウイと言う男からだった。だが俺は、王が命を狙われているから、写真にうつっている女を殺せとの命令だけだ」

しおんが、何をいっているのかも。

「お前を、殺さずにすんで良かった。俺は危うく、王の大事なものを奪ってしまうところだった」

つまり、こういうことだ。
私のお父さんは政権のために殺されて、その上口封じのために私を殺そうとしていたのだ。

そ、んな……。

しおんが歩きだすと焦って私も跡を追った。

前、二人で話してたのはその事なの?
私のお父さんは、位のために、殺された?

しおんの跡を追うのに精一杯。
女の子と男の子の歩く早さは確実に違う。

「ま、まって……しおー」

人波に紛れて、しおんが見えない。