ぼやけた視界が、ゆっくりと見開く。
 雨の音が聞こえる。妙に、うるさい。
 次第に意識がはっきりしてきた。

「...あ...」

 私、なんで泣いてるんだろう。
 なんか、悲しい夢見た気がするのに、

 あれ、なんだっけ。

 上半身を起こすとすぐそばにあった椅子に座って窓の外を眺める。

「...雨か...」

 思い出せない。あれ、なんだっけ...。

 ゴロゴロとなる雷に続いて雨は降り注いでいる。けど雨は嫌いじゃない。

 扉が勝手に開くと、ゆっくりと姿を現した。 
 あのシルクハットの男だ。

「あなた....」

 まりあは至って冷静で、シルクハットの男は薄暗闇の中、シルクハットを片手に取る。

 雷が鳴ることで、顔をやっと拝見できた。
 この人はなぜか私の事を恨んでいる。

 そう、直感がつぶやく。

「お前は....ゆいこか?答えろ」

 ゆいこ?この人、私を誰かと勘違いしているの?