一瞬のことだった。 頬に一筋の傷ができて、髪がハラハラと床に散る。 え…………。 「お前に傷をつけることなんて爪だけでも容易い。それ以上余計な詮索はせずに黙って殺されとけ」 なにも、言えなかった。 自分のことなのになにも言い返せないなんて。 「俺はどこにだっている。お前がいる場所に必ず現れる。逃げようとしても俺はお前を見つける。お前を殺すためにな」 くるりと後ろを振り返り、鏡の中へ少年は姿を消した。