「……」

まだ寒さの残る春の昼下がり、私、〈吉楽麗香・キチラクレイカ〉は賑わう城下町の片隅の建物の影にいた。

…接続詞が多くて分かりにくいと思うが、ようは隠れていたのだ。

とある事情から今私は絶対に家に帰ることが出来ない。

というか帰りたくない。

今帰ったらどうなるか分かったもんじゃない。

(いや、分かってはいるんだけどね…)

そうだ。

逆だった。今帰ったらどうなるかなんて目に見えている。

だからこそ、帰るわけにはいかないんだ。

あんな奴となんで私が……

「はぁー…」

(それにしても城下町なんて久しぶりだな)

これ以上この事を考えていても何にもならなそうだったので、張り巡らせていた思考を一旦止めて辺りを見回す。

前に来たのはいつだっただろうか。

沢山の人が忙しそうに、だが、とても楽しそうに行き来している。

すれ違う人全てが知り合いなのかと思うくらいに沢山の人が沢山の人と話している。

(私もまざっみたい…)

そう思うには十分過ぎるほどの要素がそこにはあった。

(少しくらいなら…)

城下町を見ていても見つからないんじゃないか

そんな風に考えたのがいけなかった。

「…よし!」

建物の影からそっと足を出した瞬間

「姫様ぁぁ!!探しましたよ!!」