その顔はとても穏やかで、深い眠りについているように見える。


「おまたせ。今月分だよ」


河田さんはコーヒー豆のストック棚から茶封筒を取り出してあたしに手渡した。


血なまぐさい臭いが河田さんに染みついている。


「ありがとうございます」


あたしは両手で給料袋を受け取って軽く頭を下げた。


解体の後片付けなども手伝う時があるので、あたしの給料はひと月10万円を超える。


高校生にすれば相当な金額を稼いでいると思う。


「ちょっとシャワーしてくるから、その間だけ解体部屋を見ててくれないか」


「もちろんです。ゆっくり行ってきてください」


あたしはそう言い、河田さんを見送った。


外に『お客様』は待っていなかったけれど、河田さんがいない間に『お客様』が入ってくると対応ができず待たせることになるからだ。


あたしは封筒の中身を確認して、すぐバッグに封筒を閉まった。


大金を持っていると思うとどうしてもソワソワして落ち着かない。


給料をもらった後は家に帰るまでの間に銀行に入れておくことにしているが、それまでの道のりがまた不安だった。